独り歩きする「風評」の恐ろしさあらゆる店舗や企業・団体にとって、社会的信用や業績に甚大な影響を与える風評被害対策は深刻な問題です。ネットの匿名性に乗じて、悪意のある第三者が誹謗中傷など悪質な内容の書き込みを行なう例は日々増え続けています。ネット上では、ひとたび発信されたら真偽の如何に関わらず情報が独り歩きし、いつしか公然の「事実」となるのが特徴です。言われのない誹謗中傷が引き起こす風評被害は、企業や店舗の信用やイメージを失墜させ、業績悪化や経営危機を招きます。
また風評によるマイナスイメージは社員やスタッフのモチベーションを低下させ、離職などの人材流出や内定辞退者を生むといったデメリットにつながります。また、口コミでの中傷コメントが掲載され続けただけで客足が遠のいたり、長年の顧客が離れるといった事態も起こりやすいものです。
ネットによる風評被害を最小限に抑えるためには、早期の発見および対処がポイントです。そのため、中にはサイトを常時監視する専門部署を設けている企業もありますが、大半はリスクマネジメントにそこまで人手を割くのは難しいのが現実ではないでしょうか。
お金に換えられない風評イメージダウンの損害誤った情報や根拠のない誹謗中傷が風評被害につながった場合、甚大な損害を被る一方で、被害や信用の回復は非常に困難なのがネットトラブルの特徴です。たとえば、記憶に新しい最も大きな事例は、東日本大震災に起因する東京電力福島第一原発の事故を発端とする、被災地の農作物の安全性への風評被害ではないでしょうか。
こうしたケースからは、人々の不安心理につけ込む形でデマや噂が肥大し、根拠の有無に関わらずネガティブなイメージが事実らしく定着していくという構図が見てとれるもので、発信者(加害者)が特定しにくく、風評の原因との因果関係も明確にならないことがほとんどのようです。
ネットでは、書き込み一つが火種となって、店舗や企業に計り知れないダメージを与える可能性もゼロではないという認識をまず持ち、軽い口コミだからと甘く見ないことが風評被害を最小限に抑えるカギとなります。
明らかな誹謗中傷に対してまずすべきことは、プロバイダ責任法のもとにプロバイダに対して削除請求することです。プロバイダ責任法では、風評被害等の被害者は違法な書き込みを削除するよう求めることができるほか、発信者(加害者)の情報開示請求ができることも定めています。これによって発信者を特定することができるので、刑事告訴や損害賠償請求などに一定の成果をあげています。しかし実際には、風評で被ったイメージダウンは多少の賠償金くらいで償えるものではありません。
風評被害を拡大させないためには、小さな芽のうちに対処する姿勢も重要ですが、ネット上の誹謗中傷はれっきとした犯罪行為であるという認識を持ち、法的手段を行使して解決を図る毅然とした態度も必要です。